この日はある生徒には模写を。そしてホックニー画伯(前回のブログの内容から引用)と呼ぶべき生徒はデッサンの仕上げだ。模写はこの子は初めて描く。やはり生徒自身に選んでもらうべく、わたしはミロとマックスエルンストが載っている画集を差し出した。ぱらぱら、とページをめくって「どれか好きな絵はある?」。彼は黙って画集を見ている。何度か最後のページまでいってしまい、もう一度ゆっくり1ページづつ捲りながら、あれ、、、もしやこの中には彼をハッとさせるものはなかったのだろうか、、と考えていた矢先、エルンストのコラージュを指差した。わたしとしてはそのコラージュ画を選んだのがとても意外だったので、彼は青が好きだから色で選んだのかなと思い、エルンストの別の青い絵を見せて「こっちじゃなくてそれがいいの?」と確かめた。やはりコラージュのその絵がいいみたいだ。「どこが好き?」と聞いてみた。彼は鳥籠の様な、はたまた家の様にも見える部分を指差し、わたしを見た。彼は数多くの絵の中から確かに選んでいた。この時、わたしの方が何だかハッとさせられた。
彼女は今日は仕上げる。目の前のモチーフとしたモノと自分の絵と見比べる。
何が足りないのか、わたしも見比べる。この日はモノの質感について話をした。固いものは固い鉛筆で描くのよ。柔らかいものは柔らかい鉛筆で描くの。彼女にこの中で何が一番固いかしら?質問してみる。最初考えていたが、真ん中の金物で出来た花器と木がぶつかったらどっちが負けるかとか話しながら考える。「じゃあ柔らかいのは?」って聞いてみる。「これ?」といって指したのは木のブロック。正解。彼女はもう鉛筆の固さについては教えているから、さっそく描き始めた。集中している。描いている眼差しは真剣。良い表情である。今日は完成しそうね。うん、よしよし。
わたしは生徒が絵に集中している時は、なるべく邪魔しないように写真を撮る。こっそり撮る。
難なく隠し撮りは成功を遂げている。いや、全然バレていることの方が多いのだが、この日の彼等は黙々と絵を描いていたからね。容易いもんよ。君達の真剣なそんな表情が先生はたまらなく大好きだ。
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