2012年10月16日火曜日

模写とデッサン

この日の絵画教室もいつもと変わらず始まった。こうした、いつも変わらずの開始の雰囲気良いな、好きだなと思う。「こんにちは」の挨拶から始まって、その日のことを用意して、同じ様な繰り返しの中で何かが作り出されていて、その何かは一度じゃ分からないけど、何ヶ月も何年も経って漸く形が見えてくるようなもの。通うとはそんなものだ。学校を思い出す。特にうちの教室の雰囲気は休み時間や、部活動の雰囲気に近いかな。。ここに通っていること、子供達はどう思ってくれているのかしら。。
 この日はある生徒には模写を。そしてホックニー画伯(前回のブログの内容から引用)と呼ぶべき生徒はデッサンの仕上げだ。模写はこの子は初めて描く。やはり生徒自身に選んでもらうべく、わたしはミロとマックスエルンストが載っている画集を差し出した。ぱらぱら、とページをめくって「どれか好きな絵はある?」。彼は黙って画集を見ている。何度か最後のページまでいってしまい、もう一度ゆっくり1ページづつ捲りながら、あれ、、、もしやこの中には彼をハッとさせるものはなかったのだろうか、、と考えていた矢先、エルンストのコラージュを指差した。わたしとしてはそのコラージュ画を選んだのがとても意外だったので、彼は青が好きだから色で選んだのかなと思い、エルンストの別の青い絵を見せて「こっちじゃなくてそれがいいの?」と確かめた。やはりコラージュのその絵がいいみたいだ。「どこが好き?」と聞いてみた。彼は鳥籠の様な、はたまた家の様にも見える部分を指差し、わたしを見た。彼は数多くの絵の中から確かに選んでいた。この時、わたしの方が何だかハッとさせられた。
彼女は今日は仕上げる。目の前のモチーフとしたモノと自分の絵と見比べる。
何が足りないのか、わたしも見比べる。この日はモノの質感について話をした。固いものは固い鉛筆で描くのよ。柔らかいものは柔らかい鉛筆で描くの。彼女にこの中で何が一番固いかしら?質問してみる。最初考えていたが、真ん中の金物で出来た花器と木がぶつかったらどっちが負けるかとか話しながら考える。「じゃあ柔らかいのは?」って聞いてみる。「これ?」といって指したのは木のブロック。正解。彼女はもう鉛筆の固さについては教えているから、さっそく描き始めた。集中している。描いている眼差しは真剣。良い表情である。今日は完成しそうね。うん、よしよし。

わたしは生徒が絵に集中している時は、なるべく邪魔しないように写真を撮る。こっそり撮る。


難なく隠し撮りは成功を遂げている。いや、全然バレていることの方が多いのだが、この日の彼等は黙々と絵を描いていたからね。容易いもんよ。君達の真剣なそんな表情が先生はたまらなく大好きだ。


0 件のコメント:

コメントを投稿